オタクのメモ

文章の練習

ネタバレあり感想: 玉葱とクラリオンの話と強い思い入れ

今日は下世話でゲスな話をする。 小説家になろう異世界転生もの小説 https://ncode.syosetu.com/n0632db/ のヒロイン談義についてだ。ちなみに完結済みである。 本作の魅力は、教科書に乗るような図解を伴う執拗なウンチクと、そのウンチクがもたらす社会の変容を事細かに描くことにある。 一般に流通したならウンチクは巻末に付録としてつけられるだろう。それくらい事細かい。それにより深く印象付けられた技術や文明がその後の物語を強い意味を持って飾り付ける。 それは物語では、主人公 但馬波留の知恵として繰り出され、結果として彼は国家を揺るがす詐欺師となり、異世界中を手玉に取る軍師となり、海の向こうまで轟く一大財閥の長としてのサクセスストーリーとなる。 その魅力について今回は語らず、ただひたすらに僕は下世話な話がしたい。 主人公 但馬波留と彼を取り巻く二人のヒロインの恋愛模様の話だ。言い換えると、アナスタシアの不幸属性強すぎやしないか話だ。

玉葱とクラリオンとヒロインレース

玉葱とクラリオンは二大ヒロイン体制を取っている。
堕落した修道院で育ち、花街で育った薄幸のアナスタシア、 騎士を志すも第一位の王位継承権を持つがゆえに許されない、元気が取り柄の姫君ブリジット。
ちなみに、僕はアナスタシア推しだ

アナスタシアもブリジットも魅力的なヒロインである。

アナスタシアはいわゆる薄幸の黒髪美少女で、幼い頃から娼婦として生きることを強制され 但馬に買われる形で引き取られたあとも苦しんでなお、 それでもなお異民族への迫害や戦災にたいしての憤りを行動に変える事のできる芯の強い女性であり、理想的だが人間みの感じられる。

ブリジットは但馬と最初に出会った人物であり、最初は割と高圧的な騎士様かと思いきや、 だんだんお気楽なところや脳筋なところが見えてきて、 ころっと但馬に騙されても気づかずなついているところが愛らしいし、 緊急のときや人々の生活に関わる事柄への反応の良さが速く、自分の憂いを後回しにしても 偏見の少なく効果的な行動が迅速に取れるという意味で作中で実は一番賢いのではないかと僕は見えている。いや、好意的な人物へのあれこれの比重が大きいけど、 上に立つ人物として生まれた彼女においては好ましいところだ。

本作の中盤は主人公 但馬波留と彼女二人の恋模様が描かれ、主人公の大きな選択においても彼女たちの存在が大きく影響する。 彼ら彼女らの恋愛模様は国家の存亡や世界情勢に関わる重要なものになるのだが、そういう小難しい話をすべておいて、 「アナスタシア、ブリジットが、但馬がそれぞれとくっついて幸せになれるか」という観点で話をする。

アナスタシアの不幸属性強すぎやしないか話 本題

結論を述べると、「アナスタシアの不幸属性が強すぎて乗り越えなきゃいけないポイントが多すぎてやばい」になる。作中で最終的にブリジットとくっついたのもやむなし(血の涙。

アナスタシアは但馬に対しての引け目があり、但馬はアナスタシアへの引け目がある。 列挙すると

但馬は

  • アナスタシアを娼婦として買ったこと
  • アナスタシアの幼なじみ シモンが、共に事業を立ち上げる最中に帰らぬ人となったこと
  • アナスタシアの実質的な保護者として立ち回っていたこと

を引け目に感じているし

アナスタシアは

  • 元娼婦であったこと
  • 但馬が社会的に驚異的な成功をし続けていること
  • ほとんど縁もない但馬に大金を出してもらったこと
  • その後の生活も保証され、庇護下にあったこと
  • 水車小屋( 娼婦小屋てきなあれそれ )の仲間への負い目
  • 父に捨てられたと思っていること
  • そもそも自罰的な性格である

というのがある。

これらを乗り越えるは物語として美しいが、まあ無理じゃねみたいな気持ちだ。 あと、但馬は異世界転生者として、つまり異邦人としての世界そのものに対しての疎開感を抱えて過ごしていて、 これを乗り越えるには強固な人間関係を築き上げることなんじゃないかと思う。 しかし、アナスタシアもまた異国に生まれ、親に捨てられた背景を持ち、コミュニティからの断絶があるわけで、 同じ傷を持つものが寄り添ってもいいことねえなあみたいな感じである。作中通して二人は、家族であり少し共依存的な描写が多かった。 ふたりとも理知的なのでそれに気がついて同行しようとおもっていろいろやっている描写がたまらんかったのだが、対等の立場を 構築する障害があまりにも多かった。、シモンがアナスタシアを好いていたことをいつまで立っても引け目に感じているというのもある。

また、二人が出会ったときアナスタシア10歳、但馬17歳で但馬は現代的な価値観を持つ人物であるから、 相応に苛まれるだろうし、二人が一瞬だけくっついたのも、世界かアナスタシアかみたいな極限状況だったからで、 二人の人格がいい悪い云々の前に出会いが悪かったんじゃねーかというやつだ。

ブリジットは自意識がしっかりしていて悩んでも自分のうちで解決できる自立した芯の強さがあり、 割と人間として憧れる。寄る辺なき異邦人としての但馬を支える強い力を感じている。

以上、下世話な話というか推しヒロインがだいたい辛い目に合うのが悲しくて怪文書を書いてしまう

以上、推しヒロインが主人公と刹那的にくっついてビターエンドに終わって悲しい人の感想文でした。
二人の子がいるのでバッドエンドではないし、こういうオタク的怪文書を書いてる時点で感想文じゃねーよと思うけどオタクのメモだから気にしない。 もちろん、作劇の都合上、王配候補になったほうが展開が大きくできるとか、冷静な視点ではいろいろ言えると思うけどこまけえことは知ったことじゃないんだよ!!!

とある飛空士への誓約でも推しヒロインたるミオがあれしてこれになったのも悲しかったし、割と好きになるヒロインが主人公と刹那的にくっついて、逆らえぬ大きなもの(社会情勢、世界の命運、国家の存続)に身を捧げる展開になりやすくて悲しい。とても悲しい。