オタクのメモ

文章の練習

ネタバレあり感想「打ち上げ花火、下から見るか、横から見るか」

2017/08/19付けで公開された「打ち上げ花火、下から見るか、横から見るか」(以下、"打ち上げ花火")の感想を散文として書く。

 一クソアニメウォッチャーとして、酷評の声が大きい"打ち上げ花火"は 是非見なければならないと思い、8/20にスパイダーマンと一緒に見てきた。 マーベル・ユニバースはハズレが少なくて良いね。 エイジオブウルトロンを見てないのを始まった瞬間思い出したけどどうにかなったよ。

ちなみに、僕は今作以前の"打ち上げ花火"作品達を鑑賞していない。

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結論から言うと"打ち上げ花火"は面白かった。 あと、最後のカットについての解釈の話は誰かと居酒屋ですると楽しいと思う。

中身の話

物語

 アニメ映画向きではなかったと思う。 アニメ映画はやっぱり良くも悪くもわかりやすさが大事で、 誰か一人でもわかりやすい結果が得られるとうれしい。  この"打ち上げ花火"では結末も濁されているし、 登場人物のスタンスの描写があまりない。 この辺の読み取りを90分の映画のうちでパッパッパとやるのは なかなか大変だった。

 この作品は揺れ動く十代前半の少年少女の人間関係とか 自尊心とか居場所とかを扱っていた。 その比喩として2つのガジェットが出てきた。 水晶の珠と花火だ。 水晶の珠の使い方はわかりやすかったけど、 花火のたとえはアニメーションでやるには繊細すぎたんじゃねーかなーって思う。

ヒロインなずなの造型

ヒロインなずなは悪女だった。 僕はこの作品を見ていて「ロリータ」のドロレスを思い出した。

 13歳で才色兼備、艶のある黒髪に白い肌。しかし、母は幾度と再婚をしていて、家庭環境は安定しない。 こういう少女との交流から始まる現代異能ものとか腐るほど読んできたし読み足りないからかなりワクワクした。

 お母さんが三度目の再婚(予定)相手と再婚にあたって住居を移す会話をするシーンがあるのだが、このときのお母さんのセリフが好ましくない。  再婚相手がなずなの人間関係や環境が変わることを憂うセリフにたいして、 なずなにそんなものを考慮する必要がないという。 そこからなずなの陰を感じ取ることが出来る。

 なずな自身も二人の同級生を成り行きで駆け落ちに巻き込もうとしている点で 13歳にして悪女の貫禄を見せている。

 こういう、陰のある美女/美少女にたぶらかされたい男の理想を形にした感じのあるキャラクターをアニメキャラにして一般層に受けるのかはかなり疑問である。

祐介

CV:宮野守、医者の息子であり典道の友人である祐介について思ったこと。 先になずなにターゲットとされるのが祐介なのだけど、 常日頃、友達になずなが好きと言っておきながら、 なずなに誘われたらすっぽかすのが、センサー強くてすごいなと感心した。 そのまま誘いに乗っかったらなりゆきで駆け落ちコースの時にである。 そういうセンサーがついてるのかしら。

キャスト

TVドラマ役者の主演のお二人の演技が見ていられないという声は多い。 それはやはり周囲のキャストを本職の声優で固めた点にあると思う。 ものすごく下手というわけでもないがこなれてなさはたしかにあった。 ギャーギャー言うほどではなかったし、 ジュブナイル青春物語の今作において、 こなれてなさはむしろプラスポイントとして受け取れた。

ただ、シャフトって絵の美しさが売りで動画の枚数意外と少なかったりするから、 そこへの没入感を妨げる要素があると蛇蝎のごとく嫌われるのもしかたない。

外側の話

 広告と座組

広告の撃ち方、役者の使い方なんかがどことなく君の名はに影響をうけてるような気がした。 もしかしたら君の名は人気にあやかって企画が通ったのかもしれないし、 僕の邪推のし過ぎかもしれない。 ともあれ、そこはあんまり重要じゃない。

僕はキャスティングと主題歌が菅田将暉と米津玄師であるところに注目したい。 これ朝井リョウ「何者」と組み合わせが同じだ。 ここに狙いたい層がだいたい「何者」と同じような層なんだと想像する。 たぶん、カップル層、もしくは楽しくウェイウェイ出来る人たちに見えたい映画だったと思う。

シャフトと新房監督のタッグのネームバリューはガッチガチのアニメファンじゃない人でも知っているかもしれないレベルに高いと思うのでそこを狙ったんだと思う。

まとめ

文学、文芸的な趣のつよい今作。 なずなのキャラ造型と相まってすごくマニアうけする作品だ。 多くの部分を読者の想像にまかせているから一人で見に行って浸ってよく考えてからマニア共と喋ってわいわいするのが楽しいと思う。 間違っても、カップルやファミリー向けに薦めるタイプの映画ではなかった。

そいつを恋愛邦画のような広告の撃ち方のをしていたのが、今作酷評の原因である。